人は場所ではなく、物語に移住する
date: 2026.06.20
美山でcocoNotsuを始めてから、少しずつ考えるようになったことがあります。
地域に人を呼ぶためには、何が必要なんだろう。
便利な場所であること。
仕事があること。
住む家があること。
もちろん、どれも大切です。
でも、それだけで人は「ここで暮らしてみたい」と思うのだろうか。
美山でいろいろな人と出会い、場所をつくり、イベントを続けてきて感じるのは、
人が惹かれるのは、条件だけではなく、「ここでどんな暮らしができるのか」
という物語なのではないかということです。
美山に、暮らす人を増やしたい。
美山は、鹿児島市内から車で25分ほど。
薩摩焼の里として長い歴史を持ち、窯元や工房が点在し、
ものづくりをする人たちが暮らしています。
私たちもcocoNotsuをつくり、この地域に関わるようになりました。
店を運営し、美山ビエンナーレを開催し、作家や地域の人たちと
関わっていくうちに、一つの思いが強くなっていきました。
イベントの日だけたくさんの人が訪れることも大切。
でも、地域がこれからも続いていくためには、
ここで日常を送る人が増えていくことも必要なのではないか。
そこで私たちは、美山小学校の校長住宅と教頭住宅として使われていた
二軒の家を、日置市から払い下げで購入しました。
家をつくるのではなく、暮らしをつくる。
購入したのは、ごく普通の平屋の住宅です。
いわゆるデザインされた建築でもなければ、特別な古民家でもありません。
けれど、美しいオリーブ畑に隣接する美山の自然の中にあり、
少し手を加えれば、ここで暮らす人にとって十分に魅力的な場所になる。
そう確信していました。
NiNESで改修し、新しい住まいとして再生しました。
そして一軒には造形作家としても活動するcocoNotsuの店長が。
もう一軒には、cocoNotsuでも作品を扱い、ともに活動してきた
陶芸家・有安勇翔が暮らしています。
二人とも、美山で働きながら、美山に暮らすようになりました。
仕事があって、住む場所があって、ものをつくる環境があって、近くには仲間がいる。
それぞれが独立して存在するのではなく、一つにつながることで、
初めて「ここで暮らす」という選択肢になるのだと思います。
移住は、住所を変えることではない。
「移住」という言葉を聞くと、どうしても空き家対策や補助金、
土地や住宅の価格といった話になりがちです。
もちろん、それらも必要。でも、家だけ用意して「ここに住みませんか」と言っても、
それだけではなかなか人は動かない。
その場所でどんな仕事ができるのか。
どんな人たちと出会えるのか。
休日には何をして過ごすのか。
自分のやりたいことを続けられるのか。
そして何より、
ここで暮らしたら、自分の人生が少し面白くなりそうだ。
そう思えることが大切なのではないでしょうか。
人は、場所だけを見て移住するのではない。
その場所でこれから始まる、自分自身の物語を想像して移住するのだと思います。
空き家を「余っている家」で終わらせない。
地方には、使われなくなった建物がたくさんあります。
今回の二軒も、かつては学校の先生たちが暮らしていた場所でした。
役目を終えたからといって、その建物の価値までなくなるわけではありません。
少し手を入れ、新しい役割を与えれば、そこにはまた人の暮らしが戻ってくる。
夜になれば灯りがつく。庭に人が集まる。
誰かが遊びに来て、食事をしながら話をする。
何もなかったように見えた場所に、また日常が始まります。
建物の再生とは、きれいにリノベーションすることだけではなく、
そこにもう一度、人の営みを戻すことではないでしょうか?
点ではなく、少しずつ線にしていく。
cocoNotsuをつくったこと。そこに作家が集まるようになったこと。
美山ビエンナーレを始めたこと。地域の中に作品が置かれ、人が歩くようになったこと。
そして今度は、そこで働く人やものをつくる人が、美山に暮らし始めたこと。
最初から大きな計画があったわけではありません。
一つやってみたら、次に必要なものが見えてきた。
その繰り返しです。
けれど振り返ってみると、一つひとつの「点」だったものが、少しずつ線になり始めています。 そして、その線がまた別の人につながっていけばいい。美山に店をつくりたい人が現れるかもしれない。 ここでものづくりをしたい作家が現れるかもしれない。
家族で暮らしてみたいと思う人がいるかもしれない。
そんな人たちが少しずつ増えていけば、美山の景色もまた変わっていくはずです。
デザインの、その先へ。
私たちNiNESの本業は、インテリアデザインです。
でも最近、デザインという仕事の範囲を以前より広く考えるようになりました。
その場所を使う人がいて、そこから人と人の関係が生まれ、
その周りにも小さな変化が起きていく。
そこまで含めて、場所をつくることなのだと思います。
私たちに地域全体を変えるような大きなことができるとは思っていません。
でも、一つの場所ならつくれる。一軒の家なら再生できる。
一人の作家となら一緒に何かを始められる。
そして、その小さな一つが次の一つにつながっていくことはある。
人は場所ではなく、物語に移住する。
だとすれば私たちにできるのは、移住する人を「呼ぶ」ことよりも、
ここで何かを始めてみたいと思える景色を、少しずつ増やしていくこと。
家をつくり、店をつくり、人が集まる場所をつくる。
そして、その先に新しい暮らしが始まる。
NiNESがこれからつくっていきたいのは、そんな景色なのかもしれません。
小さな会社ですが「地域文化と空間をデザインする」という大きな言葉を掲げ
小さな点を作り続けようと思います。
地域に人を呼ぶためには、何が必要なんだろう。
便利な場所であること。
仕事があること。
住む家があること。
もちろん、どれも大切です。
でも、それだけで人は「ここで暮らしてみたい」と思うのだろうか。
美山でいろいろな人と出会い、場所をつくり、イベントを続けてきて感じるのは、
人が惹かれるのは、条件だけではなく、「ここでどんな暮らしができるのか」
という物語なのではないかということです。
美山に、暮らす人を増やしたい。
美山は、鹿児島市内から車で25分ほど。
薩摩焼の里として長い歴史を持ち、窯元や工房が点在し、
ものづくりをする人たちが暮らしています。
私たちもcocoNotsuをつくり、この地域に関わるようになりました。
店を運営し、美山ビエンナーレを開催し、作家や地域の人たちと
関わっていくうちに、一つの思いが強くなっていきました。
イベントの日だけたくさんの人が訪れることも大切。
でも、地域がこれからも続いていくためには、
ここで日常を送る人が増えていくことも必要なのではないか。
そこで私たちは、美山小学校の校長住宅と教頭住宅として使われていた
二軒の家を、日置市から払い下げで購入しました。
家をつくるのではなく、暮らしをつくる。
購入したのは、ごく普通の平屋の住宅です。
いわゆるデザインされた建築でもなければ、特別な古民家でもありません。
けれど、美しいオリーブ畑に隣接する美山の自然の中にあり、
少し手を加えれば、ここで暮らす人にとって十分に魅力的な場所になる。
そう確信していました。
NiNESで改修し、新しい住まいとして再生しました。
そして一軒には造形作家としても活動するcocoNotsuの店長が。
もう一軒には、cocoNotsuでも作品を扱い、ともに活動してきた
陶芸家・有安勇翔が暮らしています。
二人とも、美山で働きながら、美山に暮らすようになりました。
仕事があって、住む場所があって、ものをつくる環境があって、近くには仲間がいる。
それぞれが独立して存在するのではなく、一つにつながることで、
初めて「ここで暮らす」という選択肢になるのだと思います。
移住は、住所を変えることではない。
「移住」という言葉を聞くと、どうしても空き家対策や補助金、
土地や住宅の価格といった話になりがちです。
もちろん、それらも必要。でも、家だけ用意して「ここに住みませんか」と言っても、
それだけではなかなか人は動かない。
その場所でどんな仕事ができるのか。
どんな人たちと出会えるのか。
休日には何をして過ごすのか。
自分のやりたいことを続けられるのか。
そして何より、
ここで暮らしたら、自分の人生が少し面白くなりそうだ。
そう思えることが大切なのではないでしょうか。
人は、場所だけを見て移住するのではない。
その場所でこれから始まる、自分自身の物語を想像して移住するのだと思います。
空き家を「余っている家」で終わらせない。
地方には、使われなくなった建物がたくさんあります。
今回の二軒も、かつては学校の先生たちが暮らしていた場所でした。
役目を終えたからといって、その建物の価値までなくなるわけではありません。
少し手を入れ、新しい役割を与えれば、そこにはまた人の暮らしが戻ってくる。
夜になれば灯りがつく。庭に人が集まる。
誰かが遊びに来て、食事をしながら話をする。
何もなかったように見えた場所に、また日常が始まります。
建物の再生とは、きれいにリノベーションすることだけではなく、
そこにもう一度、人の営みを戻すことではないでしょうか?
点ではなく、少しずつ線にしていく。
cocoNotsuをつくったこと。そこに作家が集まるようになったこと。
美山ビエンナーレを始めたこと。地域の中に作品が置かれ、人が歩くようになったこと。
そして今度は、そこで働く人やものをつくる人が、美山に暮らし始めたこと。
最初から大きな計画があったわけではありません。
一つやってみたら、次に必要なものが見えてきた。
その繰り返しです。
けれど振り返ってみると、一つひとつの「点」だったものが、少しずつ線になり始めています。 そして、その線がまた別の人につながっていけばいい。美山に店をつくりたい人が現れるかもしれない。 ここでものづくりをしたい作家が現れるかもしれない。
家族で暮らしてみたいと思う人がいるかもしれない。
そんな人たちが少しずつ増えていけば、美山の景色もまた変わっていくはずです。
デザインの、その先へ。
私たちNiNESの本業は、インテリアデザインです。
でも最近、デザインという仕事の範囲を以前より広く考えるようになりました。
その場所を使う人がいて、そこから人と人の関係が生まれ、
その周りにも小さな変化が起きていく。
そこまで含めて、場所をつくることなのだと思います。
私たちに地域全体を変えるような大きなことができるとは思っていません。
でも、一つの場所ならつくれる。一軒の家なら再生できる。
一人の作家となら一緒に何かを始められる。
そして、その小さな一つが次の一つにつながっていくことはある。
人は場所ではなく、物語に移住する。
だとすれば私たちにできるのは、移住する人を「呼ぶ」ことよりも、
ここで何かを始めてみたいと思える景色を、少しずつ増やしていくこと。
家をつくり、店をつくり、人が集まる場所をつくる。
そして、その先に新しい暮らしが始まる。
NiNESがこれからつくっていきたいのは、そんな景色なのかもしれません。
小さな会社ですが「地域文化と空間をデザインする」という大きな言葉を掲げ
小さな点を作り続けようと思います。