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空間をつくる会社が、なぜ地域で芸術祭を始めたのか
date: 2026.05.15
私たちNiNESは、店舗や住宅のインテリアデザインを仕事にしています。
では、そんな会社がなぜ、鹿児島県日置市美山という小さな町で
「美山ビエンナーレ」という芸術祭を始めたのか。
考えてみると、それは本業とはまったく違うことを始めたのではなく、
これまでやってきたことの延長にあったのかもしれません。
NiNESでは、店舗をデザインするとき、ただ単に、かっこいい空間をつくることだけを目的にはしていません。
そこを訪れる人が何を見て、どう感じ、どんな時間を過ごすのか。
住宅なら、そこで暮らす人にとって何が心地よいのか。
空間は完成した瞬間がゴールではなく、むしろそこから始まるものだと考えています。
2022年、美山に「cocoNotsu」をつくりました。
カフェや雑貨、ギャラリー、地元作家の作品販売、敷地全部を使ったイベントなど、
いろいろなものが混ざり合う場所です。
実際に自分たちで場所を運営してみると、一つの場所だけでは完結しないことに気づきました。
人が来れば、近くのお店にも立ち寄る。
作家と出会えば、新しい仕事や活動が生まれる。
地域の人と話せば、そこからまた別のつながりが始まる。
場所と場所、人と人がつながることで、一つの点だったものが少しずつ広がっていく。
だったら、cocoNotsuという一つの場所ではなく、
美山という地域そのものを舞台にできないだろうか。
そこから、美山ビエンナーレの構想が始まりました。
美山には、薩摩焼をはじめとする長い歴史があります。
窯元や工房があり、古い登り窯が残り、細い道があり、森があり、
そこで暮らしながらものをつくる人たちがいる。
新しく何かを持ち込まなくても、すでにたくさんの魅力がある場所です。
美山ビエンナーレで考えたのは、それらを一度ばらばらに見るのではなく、
アートをきっかけにつないでみることでした。
ギャラリーだけを展示会場にするのではなく、窯元や工房、古い蔵、森の中など、
美山のさまざまな場所に作品を置く。
そして地図を片手に、歩いて巡ってもらう。
作品を見るために歩いていたはずが、いつの間にか古い窯を見つけたり、
森の匂いを感じたり、初めて入る工房で作り手と話したりする。
作品と作品の間にある美山の風景まで、ひとつの展示にしてしまう。 それが、「美山まるごと美術館」という考え方です。
美山ビエンナーレには、「再生・創生・文化」という三つの柱があります。
古いものをただ保存するのでもなく、新しいものだけをつくるのでもない。
これまでこの土地で育まれてきた文化や記憶を大切にしながら、
現代の作家や表現がそこに加わることで、今までとは少し違った見え方を生み出していく。
だから、私たちは美山をアートで飾りたいわけではありません。
アートという少し違った視点を通して、
もともとここにあったものを、もう一度見つけたい。
それは美山を訪れる人だけでなく、ここで暮らす人にとっても同じです。
見慣れていた森や道、古い建物や窯が、作品と出会うことで違った景色に見える。
その小さな変化こそ、この芸術祭でつくりたかったものなのだと思います。
2025年、テスト開催として始めた美山ビエンナーレには、
「ゼロ 始まりの景色」
という名前をつけました。
まだ何が起こるのか、自分たちにも分からないところからのスタートでした。
そして2026年。第1回となる美山ビエンナーレは、
「1 目覚めの景色」
をテーマに開催しました。
美山のさまざまな場所に作品が現れ、たくさんの人が地図を持って町を歩きました。
森の中で作品と出会う人。
古い窯の中を覗き込む人。
初めて訪れた工房で作り手と言葉を交わす人。
そこには作品だけでなく、いつもの日常があり、これまでの地域の歩みもあり
音楽があり、食があり、お茶があり、人との会話がありました。
写真を振り返ってみても、印象に残るのは作品だけではありません。
作品を見る人の後ろ姿だったり、誰かと誰かが話している姿だったり、
森の中を次の会場へ歩いていく姿だったりする。
美山ビエンナーレでつくりたかった「景色」は、きっとこういうものだったのだと思います。
インテリアデザインの仕事をしていると、
どうしても完成した空間の写真が仕事の成果として残ります。
けれど、本当に大切なのはその先です。
店をつくれば、そこに人が訪れる。
人が訪れれば、会話が生まれる。
誰かと誰かが出会えば、また新しい何かが始まる。
幸せのサイクルが生まれる場所
cocoNotsuのコンセプトにもしていますが
その考えをもっと広げていくと、私たちがデザインできるものは、
建物の中だけではないのかもしれません。
美山ビエンナーレも、完成された何かを見せるための芸術祭ではありません。
まだ途中です。
一度のイベントで地域が大きく変わるとも思っていません。
でも、今まで知らなかった人が美山を訪れ、好きな場所を見つける。
作家と地域の人が出会う。
昔からある場所に、新しい使われ方が生まれる。
そして、それを見た誰かがまた何かを始める。
そんな小さな出来事が積み重なれば、少しずつ地域の景色は変わっていくはずです。
店舗や住宅をつくることも、cocoNotsuを運営することも、
美山ビエンナーレを続けることも。
NiNESにとっては、すべて同じところにつながっています。
人がいて、場所があって、そこに何かが生まれる。
私たちはこれからも、空間をつくることの、
その先にある景色まで考えていきたいと思います。
スタンプラリーが完成すると「美しき山私の中で景色が目覚める」という文字が浮かび上がる
では、そんな会社がなぜ、鹿児島県日置市美山という小さな町で
「美山ビエンナーレ」という芸術祭を始めたのか。
考えてみると、それは本業とはまったく違うことを始めたのではなく、
これまでやってきたことの延長にあったのかもしれません。
ひとつの場所から、美山という地域へ。
NiNESでは、店舗をデザインするとき、ただ単に、かっこいい空間をつくることだけを目的にはしていません。
そこを訪れる人が何を見て、どう感じ、どんな時間を過ごすのか。
住宅なら、そこで暮らす人にとって何が心地よいのか。
空間は完成した瞬間がゴールではなく、むしろそこから始まるものだと考えています。
2022年、美山に「cocoNotsu」をつくりました。
カフェや雑貨、ギャラリー、地元作家の作品販売、敷地全部を使ったイベントなど、
いろいろなものが混ざり合う場所です。
実際に自分たちで場所を運営してみると、一つの場所だけでは完結しないことに気づきました。
人が来れば、近くのお店にも立ち寄る。
作家と出会えば、新しい仕事や活動が生まれる。
地域の人と話せば、そこからまた別のつながりが始まる。
場所と場所、人と人がつながることで、一つの点だったものが少しずつ広がっていく。
だったら、cocoNotsuという一つの場所ではなく、
美山という地域そのものを舞台にできないだろうか。
そこから、美山ビエンナーレの構想が始まりました。
美山まるごと美術館。
美山には、薩摩焼をはじめとする長い歴史があります。
窯元や工房があり、古い登り窯が残り、細い道があり、森があり、
そこで暮らしながらものをつくる人たちがいる。
新しく何かを持ち込まなくても、すでにたくさんの魅力がある場所です。
美山ビエンナーレで考えたのは、それらを一度ばらばらに見るのではなく、
アートをきっかけにつないでみることでした。
ギャラリーだけを展示会場にするのではなく、窯元や工房、古い蔵、森の中など、
美山のさまざまな場所に作品を置く。
そして地図を片手に、歩いて巡ってもらう。
作品を見るために歩いていたはずが、いつの間にか古い窯を見つけたり、
森の匂いを感じたり、初めて入る工房で作り手と話したりする。
作品と作品の間にある美山の風景まで、ひとつの展示にしてしまう。 それが、「美山まるごと美術館」という考え方です。
アートで、美山を飾りたいわけではない。
美山ビエンナーレには、「再生・創生・文化」という三つの柱があります。
古いものをただ保存するのでもなく、新しいものだけをつくるのでもない。
これまでこの土地で育まれてきた文化や記憶を大切にしながら、
現代の作家や表現がそこに加わることで、今までとは少し違った見え方を生み出していく。
だから、私たちは美山をアートで飾りたいわけではありません。
アートという少し違った視点を通して、
もともとここにあったものを、もう一度見つけたい。
それは美山を訪れる人だけでなく、ここで暮らす人にとっても同じです。
見慣れていた森や道、古い建物や窯が、作品と出会うことで違った景色に見える。
その小さな変化こそ、この芸術祭でつくりたかったものなのだと思います。
「ゼロ」から「1」へ。
2025年、テスト開催として始めた美山ビエンナーレには、
「ゼロ 始まりの景色」
という名前をつけました。
まだ何が起こるのか、自分たちにも分からないところからのスタートでした。
そして2026年。第1回となる美山ビエンナーレは、
「1 目覚めの景色」
をテーマに開催しました。
美山のさまざまな場所に作品が現れ、たくさんの人が地図を持って町を歩きました。
森の中で作品と出会う人。
古い窯の中を覗き込む人。
初めて訪れた工房で作り手と言葉を交わす人。
そこには作品だけでなく、いつもの日常があり、これまでの地域の歩みもあり
音楽があり、食があり、お茶があり、人との会話がありました。
写真を振り返ってみても、印象に残るのは作品だけではありません。
作品を見る人の後ろ姿だったり、誰かと誰かが話している姿だったり、
森の中を次の会場へ歩いていく姿だったりする。
美山ビエンナーレでつくりたかった「景色」は、きっとこういうものだったのだと思います。
デザインするのは、空間だけではない。
インテリアデザインの仕事をしていると、
どうしても完成した空間の写真が仕事の成果として残ります。
けれど、本当に大切なのはその先です。
店をつくれば、そこに人が訪れる。
人が訪れれば、会話が生まれる。
誰かと誰かが出会えば、また新しい何かが始まる。
幸せのサイクルが生まれる場所
cocoNotsuのコンセプトにもしていますが
その考えをもっと広げていくと、私たちがデザインできるものは、
建物の中だけではないのかもしれません。
美山ビエンナーレも、完成された何かを見せるための芸術祭ではありません。
まだ途中です。
一度のイベントで地域が大きく変わるとも思っていません。
でも、今まで知らなかった人が美山を訪れ、好きな場所を見つける。
作家と地域の人が出会う。
昔からある場所に、新しい使われ方が生まれる。
そして、それを見た誰かがまた何かを始める。
そんな小さな出来事が積み重なれば、少しずつ地域の景色は変わっていくはずです。
店舗や住宅をつくることも、cocoNotsuを運営することも、
美山ビエンナーレを続けることも。
NiNESにとっては、すべて同じところにつながっています。
人がいて、場所があって、そこに何かが生まれる。
私たちはこれからも、空間をつくることの、
その先にある景色まで考えていきたいと思います。
スタンプラリーが完成すると「美しき山私の中で景色が目覚める」という文字が浮かび上がる